セントジョーンズワート、スペインではHierba de San Juan。
洗礼者ヨハネの草と呼ばれておるわけなんですけども、今回はですね、このセントジョーンズワートを浅堀していこうではないか。と考えておる次第です。
はい。こちらマヨルカでもですね、5月に入るとセントジョーンズワートが黄色い花を咲かせ始めまして。
毎年、それを採取してですね、セントジョーンズワートオイルを作成するわけなんですね。(義母が)
それが、手指を酷使する田中にとって、なくてはならないものになっておりまして、今年は大量生産をもくろむべく、セントジョーンズワートハントから制作まで自分でやってみた次第です。(人の手を借りまくり)
と言うことで、今回はマヨルカの田舎万歳!セントジョーンズワート狩りとオイルの作り方、使い方をざっくりとご紹介してまいります。
今回のお題目
セントジョーンズワートってどんな植物?
ガマの油が使われ始めたのは戦国時代でございまして、ガマの油売り口上が始まったのが江戸時代末期。
って、おい。じいさんの口上に釣られてしもうた。
もとい、セントジョーンズワートってどんな植物かご存じ?
和名ではセイヨウオトギリ、学名はHypericum perforatumでして、ヨーロッパには古くから自生している植物でございます。
現代でもハーブとして利用されている植物ですけども、医療的な利用は古来から行われておりまして、最初の記録は古代ギリシャ。
皇帝ネロも解毒剤として利用していたり、古ゲルマンでも魔を追い出すものとして信じられてきたんですね。
セントジョーンズワートの語源をなんとなく
学名:Hypericum perforatum
和名:セイヨウオトギリ
英名(通称):セントジョーンズワート
学名は見た目から?効果から?
では、まずその学名からちょちょいとご紹介です。
セントジョーンズワートの学名はギリシャ語で、その由来は不明なんですけども、パラケルススさんによるとHypericumは太陽神ヘリオスの父ちゃんから来てるんじゃね?とのことでして。
ヘリオスの父はハイペリオンさんでして、頭には光線が冠されてらっしゃる神様なんですね。
ホメロスの叙事詩オデュッセイアでは、ハイペリオンはヘリオスの呼び名として扱われておりまして、なんだかごちゃごちゃしておりますが、ハイペリオンも太陽神だから、まぁどっちでもいいかと。
と言ったようにですね、黄色く光輪のような花が、そういった具合でして。中世でもコロナレジア(王冠)というニックネームで呼ばれておったんですね。
またパラケルススさんは、「想像を超えた凄いもの」hyper eikonから来てるバージョンもあるよ。とおっしゃっております。
perforatumは「穴あき」の意味があるんですけども、セントジョーンズワートをよーく見てみると、葉っぱに小さな穴が開いているように見えます。
これは、葉の中の腺点によって穴が開いたように見えるわけなんですね。
後乗せの伝説なんですけど、十字軍の傷の治療にセントジョーンズワートを使っておったわけでございまして、それを見た悪魔が怒って針で葉に無数の穴を開けちゃったというですね、そんな根も葉もない伝説が人気なんですよね。
和名は刃傷沙汰から
一方、和名のオトギリソウの由来。オトギリソウ。弟切草。
もう、なんとなーくわかっちゃいました?
オトギリソウで作っていた秘薬の製造法を漏らしちゃった弟が、兄の怒りによってぶった切られたというですね・・・
そんな伝説から来ております。
いや、もうセントジョーンズワートじゃ効かないレベルというか。ご冥福をお祈りいたします。
セントジョーンズワートと呼ばれる理由
セントジョーンズワートは、その名の元になっている洗礼者ヨハネ、キリスト教登場以前より、その万能的効果が知られる薬草だったわけです。
キリスト教って一神教で、聖書に厳格なイメージがないですかね?
でもですよ、古代の風習やらいわゆる異教の文化をキリスト教化して、利用っちゅーんですかね?をしている場合も結構ありまして。
セントジョーンズワートも、平たく言えばそんな感じです。
で、どうしてこの太陽の王冠のような花が、洗礼者ヨハネの草として呼ばれるハメになったかと言うと。
カトリックでは洗礼者ヨハネの日が6月24日でありまして、セントジョーンズワートが花開くのがその日あたりだと言うことらしいんですけども・・・
セントジョーンズワートは、国や地域によりますが5月から9月頃に咲いておりますけど・・・
まぁ、その辺は、キリスト教のお偉いさんがたが決めたアレなんで、まぁ、ね。
洗礼者ヨハネと言えば
洗礼者ヨハネの首を持つサロメ グイド・レーニ
洗礼者ヨハネさんと言えば、キリストさんにヨルダン川で水をバチャバチャとかけてバプテスマ、いわゆる洗礼をした預言者でございます。
銀の皿に乗せられた、彼の斬首に口づけた戯曲サロメでもおなじみの彼ですね。
さてこの洗礼者ヨハネさん、誕生・斬首(殉教)・首の発見、と記念日?があるんですけども、6月24日は洗礼者ヨハネさんの生誕日となっております。
スペインでは洗礼者ヨハネの日の前日にセントジョーンズワートを摘んで、水の中に一晩漬けておくという習慣があります。
洗礼者ヨハネの日になると、彼が水に祝福を与えてくれます。その祝福された水で当日、洗顔するわけです。
洗礼者ならではの計らいでございますな。
今からご紹介する、セントジョーンズワートオイルも、太陽神の恵みと、このヨハネさんの祝福と関係して作られておりますぞ。
傷や痛みを和らげ、悪霊退散するという万能の植物。中世になると、悪魔祓いとしての要素が高まってまいります。
この、セントジョーンズワートを抽出した液体の色。そう、それは洗礼者ヨハネさんの殉教の血の象徴なんですね。
セントジョーンズワートオイルの作り方
セントジョーンズワートですけども、どんなところに自生しているのか?と言うと、標高2000m以下の日当たりのいい荒れ地や牧草地、森林地帯や道路沿い。
結構タフな植物なんですね。
私、田中とセントジョーンズワートの出会いも、そんな道路沿いでございました。
まぁ、どうでもいい話なので、読み飛ばしてもらって大丈夫なんですけど、どうぞ。
セントジョーンズワート狩り
時は遡って、昨年の春・・・アルサモラ家WhatsAppグループでのお話。
アルサモラ家三女:セントジョーンズワート見つけたで!見てや!
次女:これ、セントジョーンズワートちゃうで。
送られてきた写真には、黄色い小さな花が大量にさされた花瓶・・・こんなに取って来たのにねぇ。
田中、そこでセントジョーンズワートとやらは、どうやら見つけるのが難しい花なんじゃね?という妄想に取りつかれまして。だって、三女、超田舎に住んでるんだもん。
ってことは、超貴重?大量生産したら、そこらへんで売れるんじゃね?黄色の光輪の花が金色に化けんじゃね?
時は戻って、今年の春。次女夫婦と山道をドライブしていた時のことです。
次女:田中!あんた、セントジョーンズワートいるんちゃうか?
田中:へぇ。
次女:車、路肩に停めや!!
颯爽と助手席から飛び降りた次女、何やら黄色い花を採取。そして、10m先まで走って行って、また黄色い花を採取。さらに、点々と路肩に咲いている黄色い花を、走っては採取・・・
何してんねん。
結局ですよ、1㎞くらいそうやって走っては摘み摘みを繰り返した次女。息は切れ切れ。
運転手(次女旦那)と田中は、山の登り口付近に車を停車して、ぼーっとそれを眺めると言うね。
えへへ。
そこで、セントジョーンズワートオイル大量生産開始!と、製造元の義母の元を訪ねまして。
片手一杯に黄色の可憐な花を握りしめた、田中を見て義母が一言。
義母:足りひん。
えー!どんだけいんねん。そんじゃ、これ、あげるから、後はヨロシク!と言おうとした田中。
義母:明日、行くで。
とりあえず、摘んできた花の部分をハサミでチョキチョキ切り始めた義母。ハサミが面倒くさくなったのか、手でしごいて取りはじめまして。
瓶の中に入れて、エキストラバージンオイルを注ぎ、明日を待つとのこと・・・まだ詰めんのんかい。
もう、ここで心が折れましたけどね。大量生産、無理。
そして、当日。雨。
田中:雨天中止。
午後になり、やたら晴れ始める・・・
義母:晴れた。乾いた。
という、短い内容の電話を頂きまして・・・義母をピックアップして、指示された田舎道を走ること3分。
チラホラと黄色い花が見えてきまして。早速セントジョーンズワートハント開始!
いや、取り始めると面白くなってきて、ちょっと走っては取りの繰り返しを、田中も老体に鞭打って楽しんでしまった次第です。
この花、荒れた土地に固まって咲いていたり、路肩に点々と咲いていたりですね・・・
春には黄色い他の花もかなり咲くんですけど、一度見慣れてしまうと遠くからでも、車を走らせていても「あ!あいつだ!」とわかるくらい、結構特徴があることに気付きます。
それが、面白くてですね。
通りかかった村役場職員:田中、何してんの?
田中:強制労働。
どうやら彼女も、セントジョーンズワートを知らないらしい。
あかん、取り過ぎた。さすがにハサミで切るの面倒くせぇ。
と思っていたら、翌日更に義母がバケツ一杯のセントジョーンズワートと共に、颯爽と愛車で登場して
義母:根っこ付いてるの埋めや。
と、去っていったわけです。
い、いや、作って・・・と言う暇なしに・・・
そこで、田中は隣のマリアにおすそ分け。
いや、あげるし。セントジョーンズワートだし。有難く受け取れ。
生き字引、マリアも知らないらしい。
いや、それはお茶にして飲むってやつでしょ?オイルはいいよ。万能よ。って言うか、マリア眠れないとか、そういうのないでしょ?どう見ても。
と丸め込んでおりますと、ちょうど居合わせたマリアの友人アントニア。
アントニア:これがセントジョーンズワートね。こんなら家の畑にようけ咲いとるばってん。
マジでか。ってことはですよ、みんなセントジョーンズワートがどんな姿かたちなのか、知らないだけかも・・・
後日談。
あれね。田舎道をドライブしとりますと、路肩に結構な勢いで咲いているんですよね・・・
全く貴重な花でも、何でもなかったわけなんですよね・・・・
まぁ、来年からアントニアの畑で採取させてもらうんで、いいんですけどね・・・
そのころ、アルサモラ家WhatsAppグループでは
三女:見つけたで!セントジョーンズワート!
次女:せやから、それちゃうわ。
セントジョーンズワートオイルを作ってみよう!
では、採取してきたセントジョーンズワートで、早速オイルを作ってみましょう。
用意するもの
- セントジョーンズワート(摘みたてフレッシュ)
- エキストラバージンオリーブオイル
- ガラス瓶
- ハサミ
- 輝く太陽
セントジョーンズワートの花の部分(がくとか茎とか多少の葉っぱとか付いてても大丈夫)をハサミで切って、ガラス瓶にギューギューに押し込んでいきます。
これでもか!と詰めたところに、オリーブオイルを瓶の口スレスレまで注いでいきます。
あとは瓶の蓋をぎゅーっと閉めて、日の当たる屋外に放置。ヘリオスさん、よろしく。
雨が降っても、そのまま放置。
家は鶏がウロウロしているけど、お構いなく放置。
変なところだけ几帳面な天然(旦那)が、鶏いるし、瓶に泥とか跳ねるし、どこに置けばいいの?空き瓶に貼りついてる紙、取るの?取らないの?と聞いて来るのを無視して、適当に放置。
それをですね、洗礼者ヨハネの日(6月24日)に濾していくわけなんです。
はい。出た。さっき出た。
洗礼者ヨハネさんが、6月24日になった瞬間、祝福してくれたものを当日濾していくんですな。
瞬間かどうかは知らんけど。
はい。そこで田中の素朴な疑問。
5月のはじめに作ったオイルと、6月に入ってから作ったオイルじゃ、成分的に違うくね?
6月の方が、セントジョーンズワート沢山咲いてるよ。
どうしても洗礼者ヨハネさんの日に濾さないといけないわけ?
義母:洗礼者ヨハネの日に濾せ。
あー。そう。でも、大体の日数とかあるでしょ?
義母:40日。
あー。ね?じゃ、40日ってことで。
義母:洗礼者ヨハネの日。
長くなるので割愛。まぁ、作ってみちゃうよ!と言うあなたは、40日放置で。田中は、洗礼者ヨハネさんに乗っかってみようかと。
放置していると、緑色だったオリーブオイルが、こう赤黒く変わって来るんですね。
放置して1~2週間くらいかな?だんだんと、洗礼者ヨハネさんの殉教の血っぽくなってまいります。
それでもって、放置しているのも忘れかけた頃。義母からの電話。
義母:今日、濾せ。
あー。今日ね、はいはい。6月24日。洗礼者ヨハネの日当日でございます。
用意するもの
- オイル漬けしたセントジョーンズワート
- 濾すのに適した布(貰ったけど絶対使わんハンカチなど)
- ガラス瓶など(遮光性があるものがいいのかも)
布で浸けておいたものを濾していくわけなんですが、布に残ったセントジョーンズワートを、仕上げにぎゅーっと絞ります。
結構力がいる作業ですけど、手はセントジョーンズワートオイルまみれなので、絞る⇒手疲れる⇒治るの繰り返しで、全然疲れません。
と言うことで、洗礼者ヨハネさんの殉教の血、セントジョーンズワートオイル完成!有難い。有難い。
絞った後は、密閉容器で保存してください。
搾りかすなんですけど、庭に家畜がいる場合は庭に捨てないように気を付けてください。家畜への大量摂取は有毒です。
セントジョーンズワートと太陽の関係
セントジョーンズワートの有効成分として、ヒペリシンという成分があります。
これ、暗赤色の色素なんですけども、摘みたてフレッシュなものはヒペリシンもフレッシュ。摘みたてをお使いくださいませ。
で、このヒペリシン、紫外線照射で油に溶けだしていきます。これを、太陽浸出法と申します。
なもんで、セントジョーンズワートの浸出油を作るには、太陽は不可欠なんでございます。
いや、正に太陽神ヘリオスの花。
学名ですけども、黄色く輝く見た目もさることながら、太陽の光でしか浸出できない、と言うのもあながち入っているのかもしれない・・・と田中はひっそり思うのでした。
先人の知恵。すげー。太陽、すげー。
セントジョーンズワートオイルの使い方
できたセントジョーンズワートオイルは、適当に好きなところに塗っちゃえばOKなんですけど、それじゃぁね。ってことで、こちらマヨルカでの使い方、一般的使用方法をご紹介してまいります。
マヨルカでの使い方
こちらマヨルカでは、鎮痛・鎮静が一般的な使い方ですね。
筋肉痛、関節痛、打撲、捻挫、さらには傷や日焼け後なんかにも使われております。
友人に聞いたんですけど、虫刺されにもいいのだとか。
田中はこう見えて、手指の関節が弱くてですね、いつも労働によって疲弊しておるわけなんですけども、こっちに来て義母のセントジョーンズワートオイルを使ったところ、まぁ調子のいいこと。
疲れたな、と思ったら塗る。後は1日の終わりにハンドマッサージ。水仕事の後にハンドクリーム代わりにと、まぁ頻繁に使用しております。
肩とか腰とかもOKですね。
一般的な使い方
- 打撲・傷などの鎮静
- 日焼け・火傷などの炎症
- 抗ウイルス
- 保湿
- むくみ・だるさ
- 皮脂調整
- 生理痛
- 頭痛
- 緊張・精神的疲労
- イライラ・不安定
- 寝つきの悪さ
はいはい。ですね、火傷はこちらでは一般的にアロエです。今関係ないがな。
って言いますか、こんなに使い道あるなんて知らなかった・・・
セントジョーンズワート自体、ヨーロッパでは医薬品として使用されていたりするんですけども、臨床試験が行われているのは主に「うつ」関連でございます。
こちらは、経口投与ですね。全くの知識を持たないため、割愛させていただきます。
ただ、セントジョーンズワートオイルを愛用している田中、しょっちゅうイライラしておりますし、寝つきも人一倍いい方なので、全く効果はわかりません。
また、セントジョーンズワートは伝統医療で傷の治療として使われてきたわけなんですけども、こちらは成分ヒペリシンとハイパーフォリンが、抗生物質特性があることがわかっております。
使い方には気を付けよう
セントジョーンズワートオイルは、まれにアレルギーを引き起こす可能性があります。
最初に使う時には、少量で様子を見てください。
また、光感作を起こす可能性もあるので、塗った直後は紫外線にあたらないように気を付けてください。
オイルは経口投与ではないですけども、有用性の高いハーブで薬との相互作用もあるので、薬と併用する際には念のためお医者さんに相談してみてください。
っと言うわけで、マヨルカでのセントジョーンズワートオイルの作り方、使い方をご紹介してまいりましたが、田中はアロマテラピーなどの知識は毛ほどもございませんのであしからず。
そのころ、アルサモラ家WhatsAppグループでは
三女:カレンデュラオイル作ったで。
ついに、諦めた模様・・・