まいど。ディアーヌ・ド・ポワティエです。
本日は「マヨルカの伝統技術を訪ねる旅」と題しまして、ヨーロッパで唯一現存する、IKAT(イカット)織の工房に攻め入って参ったのでございます。
マヨルカくる?に似つかわしくない、ハイソな香りおフランス語を巧みに操るギエムおじいも参戦。
感動のフィナーレを迎えるのでした。

はい。今回は、マヨルカが誇る伝統芸術、イカットでトメウおじいのLet's徘徊!in サンタマリア・デル・カミ!
今回のお題目
マヨルカ島に残るイカット(IKAT)織の伝統
というわけでございまして、まずはイカットとは何ぞ?をざざーっとWiki的ご紹介。


イカット(IKAT)とは?
イカットは古くはアジアで生産が始められ、その技術はシルクロード経由でヨーロッパに伝えられました。
20世紀半ばまではヨーロッパ各地で織られていたのですが、現在ではなんと、そしてなぜか、マヨルカだけがヨーロッパで唯一その技術を残しておるのであります。
ikatはインドネシア語で「結ぶ」という意味だそうでして、オランダの学者が織物の伝統を研究し始めた20世紀初頭に、織物用語としてIKATという言葉が導入されたようです。はい。
このパターンは、縦糸と横糸の色の組み合わせによって作られるわけなんですが、糸を図形に従ってくくり、染料がくくられた部分に浸透しないように染色。その糸を使うことで、この独特のパターンが織りあがっていくという寸法でございます。

気持ち悪いこと言うなや。
マヨルカのイカットってどんなの?
こんなの。
現在マヨルカでは、3つのイカット工房がマヨルカ布Roba de Llengües(ラバ・ダ・イェンゴス)を生産しております。
その中でも、昔ながらの幅の狭い70㎝の布を生産しているのは、ここサンタマリア・デル・カミにある工房「Artesania Tèxtil Bujosa」だけなのであります。
はい。この人がギエムじい。
匠な香りのする、マヨルカ伝統のおじいです。

一目見ればわかるとは思うのですが、このイカット。幾何学柄をプリントしただけのものも売ってますので、注意してくださいね。
あ、一目見ればって、お値段ですよ。ふふふふふふ。

お値段以上それ以上IKAT♪
では、早速イカット工房に潜入開始!
マヨルカイカット工房Artesania Tèxtil Bujosa
邪魔するで~。
今回イカット工房を訪れたのは、田中とその友人。
何の知識も持たない残念な田中をよそに、喜々とメモを取る友人・・・
その間、ぽかーんと口を開けたままガシャガシャ音を立てる、黒々とした織機の油の乗り具合を、美味しそうだなぁと只々眺めている田中なのでした。

工房Bujosaの歴史
このイカット工房Bujosaは1949年に創業、3世代のファミリー企業です。
創業以来、高品質の製品と最高のサービスの提供をモットーに、イカットの技法を現代に受け継いでいます。
マヨルカの典型的な布Roba de Llengüesの製造をメインに、ジャスパー、リネン、シルク生地など、寝具やテーブルリネン、クッションなどの室内装飾品、テキスタイルアクセサリーなどのテーラーメイドを行っています。
この高い技術と製品の品質によって、様々な賞も授与されています。
図面の作成、色の調合、染色された糸が機械織機に渡されることで、マヨルカ布の典型的かつ不規則なデザインが生まれます。
このRoba de Llengüesは、シンプルな幾何学模様と明るい色調が特徴で、古代から島で使われてきたデザインを再編集したものです。
典型的なものは、古代のインディゴ(天然藍)に由来する青色なのですが、現在では最高品質レベルが保証できる化学染料を導入し、あらゆる色に対応。
クラシックなものからモダンなものまで、様々な美しい布が織りあげられているのです。
つ、疲れた。

そして、繊維の名前やら、染料の名前やら、通訳不可能な状態に陥った田中に業を煮やした友人が、おフランス語で専門用語を連発。
それを受けたギエムじい、おフランス語で応戦。
田中、蚊帳の外。

いや、誰もあんたとは言ってない。
これ、縦糸通すの全部手作業。リネンでも辛そうなのに、シルクになるととんでもなく大変そう・・・
機械が壊れたら、全て修理は自ら行い、パーツも作る。だって、売ってないんだもん。
これ、マヨルカの田舎で純粋培養された、「マヨルキン男子あるある」にも通ずるところがあるんですけど、この島の田舎者男子、何でも修理ができるんですよね。
大工仕事、土木仕事、水回り、電気関係に至るまで、マルチな才能をなぜか発揮するのが田舎者マヨルキンの特徴です。
家族が集まったら、家1軒建てられんじゃねぇの?って思ってしまうほどの生活の知恵があるんですよね。

そうなんです。だって、修理業者の人、予約しても来ないんだもん。
仕事、家の修繕、畑作業から孫の送り迎えまでこなす、マヨルカおじいは田中にとってレジェンドなんですね。

いや、誰もあんたとは言ってない。
おっと。また話が脱線しましたが、ここからはマニアックな世界をお楽しみください。
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織物マニア大集合!天然染料とリネンのお話
田中の手をとっくに離れた友人とギエムおじい。
ここからは、友人のメモを頼りにお伝えいたします。メモ読んでも良くわかんないけど、マニアさんが読んだらきっと生唾が出るんだろうなぁ。
マヨルカイカットが天然染料で染められていたのは1925年まで。
硫酸銅やら樹皮やらインディゴなんかの天然染料を説明するギエムじい。
その中でも友人が驚いたのは、1925年までコチニールカイガラムシが使われていたことだそうで・・・

そうね。最後にムシって付いてるね。
植物に寄生して、その樹液を吸って生きてる小さな虫です。
カルミン酸という深紅色の物質でして、アステカの人たちは織物だけでなく、薬や化粧品、料理にも利用していたんだそうですぜ。
コチニール色素は、最も鮮やかな天然の赤色色素なんですね。

そうね。生きるために必要な最低限の単語能力しかないからね。ってうるさいわ!
なにやらこの虫、とても高価なものらしく、1925年までマヨルカで使われていたのは驚きなのだとか。
急にこの虫を食べてみたくなった田中なのでした。

で、もう一つ。リネンにシャンブル(大麻)が使われているんですけど、絹とシャンブル混は珍しいらしく・・・
フランスでは綿と真麻混が一般的らしく・・・
はい。と言うことでございまして、マニアなメモの一部をご紹介させていただきました。

ここBujosa、ギエムじいを筆頭に、職人さんたちが物凄く親切なんです。
うちのご子息が機械織機の動きに心を奪われている間、「挟まれないように気を付けてね。」と何度も声をかけてくれたり、ヘッドフォンを貸してくれようとしたり、飽きたころ合いを見計らって、糸巻のお土産をくれたり・・・
仕事で忙しい中、写真撮影に協力してくれたり、丁寧に説明してくれたり・・・
雑談の後、店の外まで送り出してくれたり・・・あ、ちょっと。何か買わせていただきたいので、まだ店にいていいですか?

は?誰がそんな失礼なことを。品物の見る目がないアホゥですね。怖いわ。
と言うか、この機織りを目の当たりにして、欲しくならないわけないでしょう。鶴も羽をむしって恩返ししたんですよ!

ということで私の財布、天然(旦那)を探す・・・またしても、いない。

Artesania Tèxtil Bujosa
住所:C/. Bernat de Santa Eugenia, 53 07320 Santa María del Camí
ウェブサイト:http://www.bujosatextil.com/
営業時間:平日10:00~14:00・17:00~20:00 土曜日10:00~15:00
店休日:日曜休み
マヨルカにお立ち寄りの際は、ぜひとも本物を手にしてください。
工房の見学は無料でさせてもらえますが、事前に連絡を入れておくことをオススメしますよ。
その際は、ギエムじいに惚れてしまわないように注意が必要です。
逢うべき糸に巡り合ったことを 人は仕合せと呼びます(by 中島みゆき)
