はい。まいど、ミステリーハンター歴25年のベテラン田中です。
今回は、マヨルカワイナリーに残る伝統と、日本の酒造の伝統、その二つの意外な共通点をミステリー!
じゃ、ね。
皆さんは日本の酒造の軒先に吊るされた、杉玉をご存知でしょうか?
そして、海を隔てはるか西にあるスペインの離島、その離島の小さな村にだけ残る伝統、松の枝。
そんな歴史的に接触がなかったと思われる島と島に伝わる、ある共通点とは?
今宵は、そんな酒造とワイナリーの物語。伝統と歴史に彩られた、酒造りの匠たちの世界に、迫ります。
エピソード1.ワイン、うまいで~。
へいへい。まじめにやりますよ。まじめにね。できるだけ。
今回のお題目
マヨルカのワイナリーと日本の酒造の意外な共通点とは?歴史、ミステリー
はい。日本のテレビ番組、10年以上ちゃんと見てないんで、間違ってたらごめんなさいね。
えー。今回の事の発端はと申しますと、当アホサイト「マヨルカくる?」では超お馴染み、準レギュラーの地位を確保してらっしゃるワイナリーのオーナーペレ。
って、そう言うあなたたちがレギュラーですからね。
あ、お馴染みでない、あなたのためにちょっと解説。
マヨルカはおいしいワインの産地としても、結構ぐいぐい来てるスペインの島でしてね。
マヨルカの中でも、良質なワインを生産する地区の一つが、サンタ・マリア・デル・カミ。
このサンタ・マリア(略した)で、エコロジーにこだわって作っているワイナリーが、ジャウマ・デ・プンティロ。
そこのオーナーが、田中がどうやら天才なんじゃない?って予想しているペレ。
で、先日友人とペレを訪ねたところ、友人が「あ、これ日本の杉玉と一緒。」と指さしたのが、ワイナリーの軒先に吊るされた松の枝。
さささっとスマホで杉玉を検索して、ペレに見せる友人。な、なんだよ。文明の利器使うのうまいなぁ。現代人だなぁ。
目を輝かせるペレ。
ペレ:おい、田中。これ、後で写真送って。
田中:えー。いいよー。(面倒くせぇなぁ。)
翌日、杉玉の写真と作り方動画を送信。
ペレ:何の木でできてるんやっけ?
田中:杉言うてるやろ!
そして時が流れ1週間後。
ペレ:おはようさん。田中、杉玉の歴史教えて。杉玉作ってるところに連絡取りたい。
田中:・・・・。
と、超面倒くさいことに巻き込まれることになった田中。
そう言うわけでございまして、この日本の杉玉と、マヨルカワイナリーの松の枝について、適当な調査報告を完成させた次第であります。
そんな適当調査報告を、ついでにアホサイトでもご紹介したいと思う所存でございます。
良かったら、どうじょ。
歴史ミステリー、マヨルカワイナリーと日本の酒造編でございます。
Episode.1 酒造に吊るされる杉玉の正体って?
杉玉は、酒造の軒先に新酒できましたけど?って知らせるために吊るされるわけでございます。
新酒を搾り始めたことを伝えるために、新しい青々とした出来立てほやほやの杉玉と交換されるのが一般的ですよね?
杉も切られちゃったから、次第に枯れていきまさーね。
深緑の杉玉を見られるのは数週間程度で、徐々に枯れていって茶色に変色して来ます。
この杉の葉の変色具合によって、新酒の熟成具合を皆様にお伝えしているというわけです。
日本酒と言うと、美味いです。
あ、でなくて、秋から冬に仕込み始めて、2月3月で上槽、熟成させていって、次の年の6月いっぱいまでに出荷されるものが新酒でございます。
新酒ができたころには、青々とした杉玉。緑が薄~くなっていったら「夏酒」、茶色に変色する秋らへんは「ひやおろし」がうまいで~。っということを伝える役割があるんですね。
今では、こんな感じで新酒作ってますぜ!というのを知らせる目的で使われている杉玉。
以前は別の役割があったらしいんですよ。
杉玉の本来の役割って何?
はい。ここで最初のクエスチョン。
昔から酒造の軒先に吊るされていた杉玉、その本来の役割とは?
じじい、さっき使ったやろ。ちゅーか答えんかい!ボッシュート。
杉玉の本来の役割は諸説あるらしいんですが、一番有力とされているのは奈良県桜井市にある大神神社(おおみわじんじゃ)に由来するというものでございます。
大神神社は、日本で最古の神社とされておりまして、ご神体は三輪山。
古来、本殿は設けずに、三つ鳥居を通して三輪山を礼拝するというですね、はるか昔の祀り方をしている神社なんですね。
この三輪山、日本を造った神である大国主命(オオクニヌシノミコト)の魂、大物主大神(オオモノヌシノオオカミ)が鎮座する場所とされておりまして、山その物が神聖なものとされているんですね。
でしょ?これをですよ、田中はですよ、日本の神々に何のゆかりもないマヨルカおやじにですよ、説明せんなならんとですよ!
えー。これね、古事記、読んで。
古事記自体が、何やら色んなストーリーがこっちゃ混ぜになってて、田中の頭の中では既に収集がつかないものとして取り扱われている代物なのにですよ、荒魂だとか和魂だとかですよ、どうやって訳せばいいんですか?
すいません、ご搭乗のお客様の中に、翻訳者の方、いらっしゃいませんか?状態ですよ。
ハイ!
って何言わせんの。
あ、この件につきましては、本文の最後の方で何となく書いてますんで、古事記読破されていらっしゃる方は、読まないでください。
酒造りの神を祀る大神神社
大神神社と酒造りの関係はと言いますと、6世紀頃国中に疫病が流行したときから始まります。
当時の天皇、崇神天皇は国中で猛威を振るう疫病について、酷く心を痛めておられました。
それ、17代宮崎県知事な。崇神天皇は10代目な。
そんな崇神天皇の枕元に、大物主大神がお立ちになります。
大物主大神:あれ、あんな。酒、奉納してんか。
翌日早速酒を造って奉納したところ、物凄い勢いで疫病が収まったという伝説が伝えられておるんですね。
その時、酒を造った杜氏が高橋活日(たかはしのいくひ)でして、杜氏の祖先とされております。
そんなこんなでありまして、大神神社が祀る祭神、大物主大神は酒造りの神としても敬われるようになったわけでございます。
じじいに奉納しても、酔っ払いが一人追加されるだけでしょうが。
三輪山とお酒のディープな関係
この三輪山、みむろやまとも呼ばれておりまして、「みむろ」とは「酒のもと」という意味なんですね。
さらに、お神酒。お・み・き。
神様に奉納するお酒でございますが、これ、昔は「みわ」って呼ばれていたらしいですよ。
なんだかとてつもなく、お酒とのかかわりを感じますよね?
誰もあんたに奉納しないから。
で、結局杉玉どこいってん?
すいません。杉玉でした。
大神神社のご神木は、杉。
三輪山の杉は、神が宿る木として信仰されておるんです。
その神聖な杉の木を束ねて軒下に吊るすことで、お酒の神様に感謝をささげるっていうのが、杉玉の本来の役割だったそうなんです。
以前は杉の枝で酒造の看板をつくる風習だったらしいんですけど、葉を束ねた形状の、「酒箒(さかぼうき)」「酒旗(さかばた)」と呼ばれるものに変化していきます。
さらに、江戸時代中期には「酒林(さかばやし)」と呼ばれるようになり、江戸時代後期に現在のような球状になったということです。
そんでもって、杉玉。本来はこの三輪山で取れた杉から作られたものを酒造や酒屋さんたちはいただきに行ってたらしいんですが、今では自分たちでこしらえたり、専門の業者に頼んだりしてるそうです。はい。
ふえ?
全国の蔵元・杜氏が集まる大神神社
毎年11月14日には、大神神社で「酒造安全祈願祭」っていうお酒祭りがあるんですね。
そこには、全国から蔵元や杜氏が集まって、祝詞があげられ神楽が奉納されたりするんです。
で、大神神社に吊るされてる直径1.5m、重さ200㎏の大杉玉の交換も行われるんですねぇ。
境内では振る舞い酒も行われるんで、参拝客やら観光客やらも参加して、にぎやかな祭りになるとです。
っというのが、杉玉が何たるかっていうお話。
そんでもって、ここからは、かつては日の沈まない国とまで言われたスペインにある離島マヨルカでのお話。
Episode.2 マヨルカのワイナリーに残る「松の枝」の伝統とは?
マヨルカのワイナリーで見かける、エントランスに吊るされた松の枝。
これ、マヨルカの中でも、ここサンタ・マリア・デル・カミだけが代々受け継いできた伝統なんでございます。
マヨルカの他の地域では、見られないんですね。
このワイナリーのエントランスに木を吊るすという風習は、スペインでもバレアレス諸島やカタルーニャ地方、イタリア、フランスなんかの地中海地域にある伝統らしいです。
マヨルカのサンタ・マリア・デル・カミは、松の枝を下げてますけど、他の地中海地域では別の木を使っているのだとか。
調べてみると、オーストリアにも松の枝を居酒屋(ホイリゲ)に吊るす風習があるようですね。
新酒のワイン(ホイリゲ)解禁ざーます。お集まり遊ばせ。
って感じで、ホイリゲに松の枝吊るして、ホイリゲを飲むというですねぇ。何ともホイリゲな感じですね。
サンタ・マリアのこの風習の起源は、ローマ時代まで遡るそうです。
マヨルカも帝国ローマに支配されていた時期がございまして、その時期にもたらされたワイン造りの技術と共に、松の枝の風習も始まったわけでございます。
古っ。で、何でサンタ・マリアだけが伝統を守ってるんですかね?
マヨルカに残る松の枝の風習って?
このマヨルカの、サンタ・マリアのワイナリーに吊るされた松の枝。
「ワインを樽に仕込みましたけど」の合図として、毎年樽に仕込む時に新しい枝に架け替えられているんですね。
へぇ。
「松の枝があるところには、美味しいワインがある」
これ、マヨルカの格言みたいなもんでしてね。まさに、この枝のことを指しているわけです。
で、大昔はと言うと、新しい樽が開けられる毎に、松の枝を付け替えていたらしいんですわ。
「新しい樽開けたで、今なら美味しいで」って言う感じですな。
昔はもちろん電気も新聞なかったんで、町内放送の代わりに村の大事な連絡を、大声を張り上げて伝える仕事の人がいたんです。
松の枝が付け替えられたワイナリーがあったら、この人間伝言スピーカーさんが「〇〇ところで、新しい樽開けたで~。うまい。」
って村中を廻って宣伝していたらしいです。絶対最後に「ès molt bó(エス・モル・バ)」うまいで~!で締めるのが習わしだったとか。
で、何で松の枝なん?
うーん。ここからはですね、田中の勝手な想像の域を越えないんでですね、信じないでくださいね。
あ、今までのことは全部本当に語り伝えられている話でやんす。厳密に言うと、大国主命に会ったことがないんで、よくわかんないですけども。
ローマ統治時代は、まだキリスト教も入ってきておらずですね、色んな宗教的観念が存在してましたよね?
ローマで言えば、ローマ神話に出てくる神々。
神話で酒の神と言えば、ギリシャ神話のディオニューソス、ローマ神話では名前が変わってバックス。
日本ではバッカスって名前の方が有名でしょうかね?
お酒、いわゆるワインと享楽の神さまでございます。
そんでもって、このバックスの巫女というか、熱狂的な女性信奉者であるマイナスってのが神話に登場するんですね。
ワインで泥酔して、色んなですねぇ泥酔したって理由じゃすまされないような狂気な行為をやっちゃう、ちょっと危ない女性たちであります。
ちょっと見かけた森の動物を八つ裂き、壊滅。目が合ったら最後ですわ。
バックスじゃなくて自分を崇拝しろよ。と文句を言ったテーバイの王を森で切り裂く。
バックス信者であったその母親が、息子テーバイ王の首を切り落とす。
などと言うですねぇ、あー。私、酔っちゃったかもしれない。というような、男性をドキッとさせるような感じとは全くかけ離れた、この、何と言いますかねぇ。
ワイルドにも程があるわ!狂気や!好きですけど。
で、このマイナスちゃんたち、テュルソスっていう杖を持って登場するんですね。
このテュルソスの杖、バックスとマイナスちゃんたちの持ち物とされております。
持ち手のところは大ウイキョウだったりするんですが、その先端には必ず松ぼっくりがくっついているんです。
えぇ、松ぼっくり。
ってことで、マヨルカのサンタ・マリアに残る松の枝の伝統って、もしかして酒の神バックスに感謝と祈りをささげるためのものだったんじゃないかって、そう推測したわけです。
そうであれば古来の本来の意味も、日本の杉玉と同じような感じなんじゃね?と思った次第でして。
ペレに連絡
田中:かくかくしかじかで、どう思う?
ペレ:田中、また頭打ったんか?
神様のその魂の神様って何ね?
はい、ここでしぶしぶ大国主命と、その魂である大物主大神って何よ?って話。
はーい、そこの文学青年、神社関係者様、古代史、民俗学大好き青年たち、耳をお塞ぎなさい。
古事記では、大国主命が国造りどないしよう?って悩んでた時に、神様がぴっかーっと現れて、「私を祀りなさい。」と言ったそうでございます。
で、その神様を祀ったのが三輪山。
このぴっかーっと出てきた神様は、日本書紀によると大国主命の別名。
大神神社の言い伝えでは、大国主命の「和魂(にきみたま)」であるそうな。
そんでもって、崇神天皇の時代に起こった疫病や飢饉、実は大国主命の「荒魂(あらみたま)」が引き起こしたらしいんですね。
何しとんねん。まさかの一人大立ち回り・・・
怒ったで~!わしの荒々しい側が暴れるで~。
この怒り鎮めるんは、わしのいい人側の方に酒でもやらな鎮まらんで~。
っとまぁ、こんな感じなんでしょうかね?はぁ?
えぇ、まあ荒々しい側にお酒をあげると、さらに暴れそうな気もしますしね。
これ、神道の神様には2つの側面があるという考え方なんですね。
荒魂は、その名のとおり神の荒々しさ、勇猛果敢さなど荒ぶる魂。
一方、和魂はそれと対極するもので、五穀豊穣をもたらしたり、幸せをもたらす穏やかな魂。
この2つの側面は、一人の神でも全く別のキャラを持つために、別々の名前をつけてそれぞれ別々に祀られることがあるんです。
ちゃうわ。
日照りや水害、疫病など、この自然の驚異、それと実りをもたらしてくれる自然の大いなる力。
相反する、対局する抗えない力。なんて自然って理不尽なわけ?
っていうところから、この神様の魂の側面を見出したのかもしれませんね。知らんけど。
奈良県桜井市の大神神社には、大国主命の和魂。
その近くにある奈良県天理市の大和神社は、大国主命の荒魂が鎮座されております。
古事記、上中下の3巻にまとまった、日本神話の神様から天皇へ移り変わる物語なわけでして、その中に色んなエピソードがごちゃっと盛り込まれております。
神様の名前がやたら長いし、もうそっから無理。って感じですけども、意外と読んでみると面白いんで、マンガやらで読むといいかもですね。
天邇岐志国邇岐志天津日高日子番能邇邇藝命
読めるかい!あ、これ天孫降臨した神さんニニギさんのお名前らしいですよ。
まぁ、ピカソの長さに比べると大したことないんで、大丈夫っす。漢字、読めないけどね。
この神様の名前は、単なる名前だけじゃなくて、それがどういう状態なのか?っていう説明が加わった大和言葉なんで長いんですね。
「天からやって来たアマテラスさんの御子で、この国に立派な稲を持ってきてくれたんで、そりゃ豊作さの神様」ってな感じの意味でございます。